童謡『とんぼのめがね』歌詞全文と3色の意味|知られざる誕生の真相
秋風が吹き抜ける季節、保育園や幼稚園の教室から子どもたちの元気な歌声が響いてきます。親しみやすいフレーズで世代を超えて愛され続ける日本の名作童謡『とんぼのめがね』。誰もが一度は口ずさんだ経験があるはずですが、歌詞に登場する「3つの色」が何を指しているのか、そしてどのような時代背景からこの歌が生まれたのかを正確に知る人は多くありません。
澄み渡る秋空を飛ぶとんぼの姿を描いたこの短い歌の裏側には、戦後の混乱期に子どもたちの命と向き合い続けた一人の医師の深い情愛が刻まれています。本稿では、歌詞の全文とともに、水色・ピカピカ・赤色が表現する真意、誕生の地となった福島県広野町にまつわる心温まるエピソード、さらには保育現場で実践できる手遊びや振り付けのポイントまで余すところなく紐解いていきます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 歌詞の情景と意味:「水色」「ぴかぴか」「赤色」は、時間帯ごとの自然風景がとんぼの複眼に映り込む様子と、秋に見られるとんぼの色彩を見事に捉えている。
- 誕生の背景と真相:作詞を手がけた医師・額賀誠志が、戦後の福島県広野町で懸命に生きる子どもたちの無邪気な笑顔に心を打たれて生み出した。
- 保育での活用法:両手で作るメガネや羽ばたきなどシンプルな振り付けが特徴で、秋の季節感を育む手遊び歌として教育現場で重宝されている。
【歌詞全文】童謡『とんぼのめがね』1番〜3番の言葉と美しい世界観
『とんぼのめがね』は、わずか4行・3連という極めてコンパクトな構成でありながら、日本の豊かな自然美と子どもの純粋な視点を鮮やかに切り取った傑作です。まずはその歌詞全文を振り返ってみましょう。
【1番】
とんぼの めがねは
みずいろ めがね
あおいおそらを
とんだから とんだから
【2番】
とんぼの めがねは
ぴか ぴか めがね
おてんとさまを
みてたから みてたから
【3番】
とんぼの めがねは
あかいろ めがね
ゆうやけぐもを
とんだから とんだから
1番から3番にかけて、とんぼのめがねの色が「みずいろ」「ぴかぴか」「あかいろ」へと移り変わっていく構成が特徴的です。朝や昼の澄み渡る青空から、眩しく輝く太陽の光、そして夕暮れの茜空へと、時間の経過に沿って美しいグラデーションが描かれています。子どもにも直感的に理解できるリズミカルな反復表現が、聴く人の心に心地よい余韻を残します。
【色の意味と真相】なぜ水色・ピカピカ・赤色?トンボの複眼に映る自然
歌詞に登場する「3つのめがね」には、自然観察に基づいた緻密な描写と、詩人ならではの豊かなイマジネーションが重なり合っています。「なぜその色なのか」という疑問に対する答えには、大きく分けて2つの視点が存在します。
1つ目の視点は、とんぼの大きな複眼に映り込む雄大な景色です。とんぼの目は無数の個眼が集まった半球状の複眼でできており、周囲の光や色を敏感に反射します。青空を高く飛べば空の水色が目に映り、頭上のお日さまを見上げれば日光を浴びて宝石のようにピカピカと輝き、夕暮れどきに群れ飛べば夕焼け雲の紅が瞳を満たす。とんぼが見ている世界そのものが、めがねの色として表現されているのです。
2つ目の視点は、日本で親しまれているとんぼの種類そのものを象徴しているという解釈です。秋の初めによく見かけるシオカラトンボの水色、日差しを浴びて金属光沢を放つギンヤンマやオニヤンマの輝き、そして秋の深まりとともに里山を赤く染めるアキアカネ(赤とんぼ)。子どもたちが身近な原っぱで目にする代表的なとんぼたちの姿が、それぞれの歌詞に見事に投影されています。
科学的な観察眼と子どもの空想の世界が幸福に融合したからこそ、この3色は半世紀以上が経過した現在でも色あせることなく、人々の情景喚起力を刺激し続けています。
福島県広野町で生まれた感動物語|作詞者・額賀誠志と平井康三郎の歩み
『とんぼのめがね』が生まれた背景には、知られざる温かな人間ドラマがありました。作詞を手がけたのは、医師であり詩人でもあった額賀誠志(ぬかが・せいし)、作曲は名曲『スキー』や合唱組曲などで知られる昭和を代表する作曲家・平井康三郎(ひらい・こうざぶろう)です。
舞台となったのは、福島県の太平洋側に位置する自然豊かな町、福島県双葉郡広野町です。終戦直後の1947(昭和22)年、額賀医師はこの地に請われて診療所を開設しました。当時の日本は戦後の激動期であり、物資も食糧も乏しく、多くの子どもたちが栄養失調や衛生環境の悪化に苦しんでいました。額賀医師は昼夜を問わず往診に奔走し、地域医療の再生に尽力します。
ある秋の日、往診の合間に広野町上浅見川の原っぱを歩いていた額賀医師は、貧しく厳しい生活の中でも屈託のない笑顔でとんぼを追いかける子どもたちの姿を目にしました。竹ぼうきの先にトリモチをつけて器用にとんぼを捕まえ、「見て見て、先生!お空が映って水色だよ」とはしゃぐ子どもたち。その澄んだ瞳と無邪気な声に触れた瞬間、胸を打たれた額賀医師の心に浮かんだ詩が、この『とんぼのめがね』でした。
その後、1949(昭和24)年にNHKのラジオ番組で平井康三郎の曲に乗せて放送されると、全国の茶の間や学校へ瞬く間に広まりました。現在、広野町は「童謡の里」として知られ、JR広野駅の駅前には歌碑が建ち、列車の発車メロディにもこの調べが採用されています。困難な時代にあっても失われなかった子どもの純真さと、地域を見守り続けた町医者の慈愛が、この歌の根底には脈々と流れています。
【保育現場で大活躍】秋の歌に最適な理由と子どもが喜ぶ手遊び・振り付け
全国の幼稚園や保育園において、『とんぼのめがね』は9月から10月にかけて歌われる「秋の歌」の代表格として定着しています。1歳児から5歳児まで幅広い年齢層で親しまれている背景には、発達段階に合わせた多様な身体表現ができる点にあります。
導入として最も人気が高いのが、親指と人差し指で輪を作り、両目の前にあてて「めがね」を作る手遊び表現です。視覚的にもわかりやすく、未満児でもすぐに真似できるのが大きな利点です。
【年齢に応じた振り付けの展開例】
- 1〜2歳児(基本の手遊び):「とんぼのめがねは〜」で両手で丸を作って目に当て、歌詞の「とんだから」に合わせて体を左右に揺らしたり、手を小さくひらひら動かします。
- 3歳児(全身運動へのステップ):メガネのポーズに加え、「ぴかぴか」では両手をパッと開いて星のようにきらめかせ、「あかいろ」では夕暮れを表現するように手を大きく広げます。
- 4〜5歳児(ごっこ遊び・空間移動):歌の前半はメガネを作り、後半の「とんだから〜」で両手を左右にまっすぐ伸ばして本物のとんぼになりきり、教室内をぶつからないように軽やかに走り回ります。
カラーセロハンを貼った手作りのペーパーメガネを子どもたちと一緒に制作し、園庭の景色や太陽を覗き込んで「先生、本当に水色に見える!」「あっちに行くとピカピカするよ」と体験学習へ発展させる活動も定番です。歌を通して五感を刺激し、自然現象への興味関心を育む教材として、現在も保育の現場で絶大な信頼を集めています。
【楽譜と演奏のコツ】平井康三郎が紡いだ親しみやすいメロディの魅力
平井康三郎による作曲の妙も、この歌が長く愛され続ける決定的な要因です。楽譜を開いてみると、変ホ長調(またはハ長調など歌いやすい調に移調)の4分の2拍子で構成され、音域が「ド〜ラ」の1オクターブ以内に収まるよう極めてコンパクトに設計されています。
声帯がまだ十分に発達していない幼児でも無理なく地声で発声できる音域設定になっており、息継ぎのポイントも「とんぼの めがねは(ブレス)」「みずいろ めがね(ブレス)」と自然な会話のリズムに一致しています。ピアノ伴奏を担う保育士や保護者にとっても、左手の伴奏形がシンプルで弾きやすく、現場での即応性に優れています。
演奏する際のコツは、スタッカート気味の軽やかなリズム感を意識することです。重々しく弾くのではなく、とんぼが風に乗ってスイスイと空中を滑空し、時折ピタッと空中で静止するような浮遊感を鍵盤の上で表現すると、子どもたちの歌声も自然と弾み、明るい表情が引き出されます。
【とんぼのめがね 歌詞】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:歌詞の「おてんとさま」とはどういう意味ですか?
A1:「おてんとさま」は太陽(お日さま)を親しみを込めて呼ぶ日本の伝統的な言葉です。「お天道様(おてんとうさま)」が幼児向けに柔らかく表現されたもので、天からいつも温かく見守ってくれている太陽そのものを指しています。
Q2:『とんぼのめがね』に幻の4番はあるのでしょうか?
A2:公式に発表されている原詩は1番から3番までです。一部の地域や園のレクリエーションで「くろいろめがね(夜の闇をとんだから)」や「みどりいろめがね(野原をとんだから)」といった替え歌が親しまれている事例はありますが、額賀誠志が作詞したオリジナルは3番で完結しています。
Q3:なぜ広野町が「童謡の里」と呼ばれるようになったのですか?
A3:『とんぼのめがね』が誕生した舞台であることに加え、町の美しい里山風景を後世へ残すため、広野町が昭和末期から「童謡の里づくり」を推進したためです。町内には記念碑が複数点在し、文化的シンボルとして大切に継承されています。
まとめ:時代を超えて歌い継がれる『とんぼのめがね』が伝える温もり
わずか数行の短い言葉のなかに、秋の澄んだ空気、季節の移ろい、そして子どもたちへ向けられた大人の温かな眼差しが凝縮された『とんぼのめがね』。作詞者・額賀誠志が戦後の困難な時代に見出した「子どもの笑顔という光」は、半世紀以上の時を越えた今の社会においても、変わらない普遍的な尊さを放っています。
秋の夕暮れ、空を見上げれば無数に飛び交う赤とんぼの姿を見つけることができます。今度その姿を見かけたときは、ぜひ指で小さなメガネを作りながら、広野町の原っぱから始まったこの美しい物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 (出典: とんぼ の めがね 歌詞(Yahoo!ニュース))